屋根土を用いた「従来工法」で建てる日本家屋は、驚くほど丈夫です!

「現在の工法」で作る日本家屋は、屋根の野地板(のじいた)に防水材を張り、その上に桟(さん)を打ち、桟に瓦を留めて葺(ふ)いていきます。

対して、僕のような大工が建てる「従来工法」の日本家屋は、防水材の上に檜皮(ひがわ=ヒノキの皮)を敷き、その上に桟を打ってから屋根土をのせて、瓦を葺いていきます。

精密な計算によって組み上げられた「柱」の重さと、「屋根土」の重さが、建物の強度を増し、倒壊を防ぐための役割を果たしているのです。

断言しますが、従来工法で建てた日本家屋が、屋根の重さが原因で倒れるということは、まずありません。

メンテナンスさえ怠らなければ、孫末代まで長持ちする丈夫な家、と言っても過言ではありません!

土を作る職人さん。その名は「どろんこ屋さん」!

「屋根土」は、建物の強度を増す役割だけでなく、断熱効果もあります。

屋根土の他にも、家の壁に用いる「壁土」という土があります。

丈夫な家を建てるためには「良い屋根土」「良い壁土」が、絶対に必要だと僕は考えています。

土が良ければ、その分家が丈夫になり、長持ちもするからです。

これらの土を作ってくれているのが、通称「どろんこ屋さん」と呼ばれる職人さんたちです。

日本の伝統技法「良い土の作り方」

良い土を作るには、長い時間と多くの手間がかかります。

まずはベースとなる「赤土」ですが、これは基本的に「その土地」のモノを使用します。

赤土のままだと干割(ひわ)れしやすく、この状態を「土が若い」という言い方をします。

その赤土に「砂(砕石)」、「粘土」、「藁すさ」、「水」、を加えます。

藁すさとは、古い藁やむしろを2cmほどに切り、叩いて水に漬けて柔らかくしたモノのことです(*関東方面では「つた」と呼ばれています)。

土を寝かせ始めると、1週間ほどで発酵し、次第に藁すさが柔らかくなってきます。

その状態の土をひっくり返してみると、中は真っ黒になっています。微生物が藁を食べながら、発酵している証拠なんですね。

その後、何度もひっくり返して土の中に新しい空気を入れてやり、水と藁すさを加えながら、何か月も寝かせて、大事に土を育てていきます

屋根土と壁土に使用する「土の違い」

「屋根土」と「壁土」に使用する土は、配合と寝かせる期間によって区別します。

基本的に、屋根土には「水分と藁すさが少ない硬い土」を使用し、壁土には「水分も藁すさも多めで柔らかい土」を使用します。

屋根土は長く置きすぎてはいけません。

屋根土が柔らかすぎると、瓦を葺く際に、瓦がズブズブと沈んでしまいます。

硬い土にグッと押し付けながら、屋根と瓦を密着させていくのです。

対して壁土は、粘り気を出すために長く置きます。

その分、発酵が進みますから、強烈な臭いを発します。

ただし、塗り終わって乾いてしまえば、全く臭わなくなりますから心配ご無用です(笑)

昔の大工さんは「お城を建てるための仕度は、材木よりも先に土を用意しろ」と言っていたそうです。

丈夫で長持ちする建物をつくるには、それだけ手間暇がかかった、ということですね。

「良い土」は、何百年たっても生き続けている!

この様に、丹精込めて作られた「良い土」は、驚くべきことに何百年経っても再利用できます

昔のお城や古民家を解体して出てきた土は、漆喰を取り除いて水を与えてあげると、見事に復活するのです!

僕の夢は「ボルト1つ使わず、循環できる素材だけで家を建てる」ことです。

なんと、それを実際にやられている大工さんが、現代の日本にも存在しています!

高度な技術と経験が必要ですので、とても難しいのですが、いつか僕もそうなれるよう、日々精進していきたいと思います!