最終追記:2018年05月01日更新
手刻みの日本家屋は日本の森林を守るエコ住宅
日本建築のWebサイトに書かれている「手刻み」。
手刻みの本当の意味をご存じですか?手刻みとは、 材木ひとつひとつを吟味して選び、鋸と鉋を使って材木を整え墨を付けていく、古来から伝わってきた材木の加工法のことです。今回は、あらためてこの“手刻み”の良さについてお話ししたいと思います。
これまでの、いろいろなところでお伝えしてきたように、 材木を選ぶのには、最低でも15年かかります。そして、墨を打てるようになるまでに2〜3年かかります。
木材選び、墨打ちなどのすべてが「手刻み」です。
ただ、手作業で材木をカットしていくことだけではないんです。そこには、もっと長くて深い物語があります。
僕たち大工は、まず、材木屋さんに材木を仕入れにいきます。そして、買ってきてすぐには使いません。
材木を仕入れてから、最低でも3年は寝かせます。
この3年間でどんなふうに曲がるか様子を見るのです。 そして、どの子(材木)が、どの場所にちょうどいいのか見極めていきます。以前にお伝えしたように、材木にはそれぞれに癖があります。
例えば、ねじりがある木は谷底で育った子です。
皮をめくれば、そのねじれはわかります。
谷底は風が同じ方向に強く吹きますよね。 風が吹くと、どうしても木は揺れます。 同じ方向に揺れているうちに、ねじれながら育つわけです。
建造物の倒れるときは、通常、全体がねじれながら倒壊するのでねじれを防ぐことは重要です。 同じ方向にねじれた柱ばかりで立てると当然、同じ方向へ建物全体がねじれて倒壊します。 でも、逆向きのねじれのある材木と組み合わせるとそれぞれの柱に違うベクトルが生まれるので同じ方向へは倒れにくくなります。違う方向を向いた木と組み合わせることによって強度が増すんですね。なんだか、人間関係みたいですよね。
もちろん、そんな単純なことだけではないのですがそういった材木の癖や向きを見極めて、
適材適所を考えていく棟梁の腕の見せ所です。
材木選びにも時間がかかりますが、その前に、材木自体も、育つのに時間がかかります。柱には樹齢30〜50年の木を使いますので、施主さまの生まれる前から育ってきた木を使うこともあるかもしれません。
ゆっくり育った木は、いい木なんです。なぜなら、粘りがあるからです。
粘りがある木はしっかり支えることができます。これまた、人間みたいでしょう?ゆっくり育った木を、さらに寝かせ、これまたゆっくりじっくり育った大工が、時間をかけてしっかり施工する。そうしてできあがった家は、
手入れさえすれば、100年以上持つ丈夫な家です。
さて、そうしている間に、植林した木がまた育ちます。すぐに建てて、すぐに取り壊す。という早いサイクルが大前提だと、木が育つのに間に合いません。そうなると、海外から材木を取り寄せなければならなくなります。
日本家屋なら日本の山の木だけで十分
ゆっくりじっくりしっかりの日本建築なら日本の山の木だけで十分、賄っていけるはずです。
とてもスローで本当のエコ住宅だと思いませんか?
ながら・加藤建築では、デザイン的なことも相談に乗りますし、いっしょに相談しながら、建てていけます。次の世代の子どもたちがデザインを変えたければリフォームも可能です。今建てておけば、孫の代には素敵な古民家にも…。日本の建築の素晴らしさを、一度、見学していただきたいものです。
「日本の仕事、日本の山」で大工と木の関りについて書いています、一度ご覧ください。