最終追記:2018年05月01日更新
今回はながら・加藤建築のホームページで人気の高い「大黒柱」の話をしたいと思います。残念なことですが、最近は大黒柱のある家は減ってきています。
デザイン的に好まない人やコストダウンするためと …というのが理由のようです。 でも、はっきり言います。
大黒柱はあったほうが、絶対に丈夫です!
金額については「大黒柱の値段」で触れています。
通し柱だけよりも、大黒柱と女大黒があることで 確実に長持ちしますし、ひずみもまったく違います。 地震や台風などの震災にも強いのです。
20〜30坪の住宅であれば、大黒柱を入れること自体が難しいのですが、50坪以上の大きな住宅の場合は、大黒柱があるのと無いのとではまったく違うでしょうね。
お父さん(大黒柱)とお母さん(女大黒)がいる
家族がしっかり団結するのと似ている気もするんですね。 リーダーがいる組織は、団結力がありますしね!
ただ大黒柱が無くてはダメなのか聞かれると、構造的に絶対にダメなわけではありません。様々な技術の進歩により全体で支える構造によって耐震基準はクリアできるからです。
例えば、京都の町家などは狭い空間で効率よくスペースを作るため いわゆる大きくて太い大黒柱は、あまり見かけないようです。
この三河に大黒柱が普及したのは、戦国時代以降、城や神社、お寺などの整備をしたことが、きっかけではないでしょうか。さらに、三河は徳川家ゆかりの土地柄なので、腕の良い職人を集めて来たのではないかと考えられるでしょう。
また、伊勢湾台風による被害の結果とも関係しているようです。伊勢湾台風のときに、渥美半島近辺の木造家屋では、新築中(建前して骨組みのみ)で、細い通し柱だけだった家は、2階から上の部分がほとんど折れていたそうです。 6寸角の通し柱+大黒柱で建てた家だと、柱はほとんど折れることが無く立っていたようでした。
災害があると、その強度で明暗がはっきり分かれますね。 地場の大工は、そういう歴史を知ったうえで建てているんですね。
大黒柱の素材はやっぱり「欅(けやき)」
欅~けやき~は日本の樹木の王様
と言われ、その木目の美しさが素晴らしく、とても固く、丈夫という特徴があります。
でも、実は曲がりやすいという欠点もあります。僕の場合は、まず、材木の卸売市場で、木目を見ておとなしそうで、まっすぐな子を選びます。
そして、「木を寝かせるということ」で書いたように、僕は材木を必ず寝かせますので、寝かせながら乾燥させて曲がるかどうかを確認しながら見ていきます。
曲がってきた子は、見た目で分かりますので、そんな子は、違う使い道(通し柱)以外の役割を与えます。これならいい子だと思って乾燥させても、曲がっちゃう子もいるんです(笑)
欅(けやき)の場合は、最低でも5年寝かせて様子を見ますがこだわっている棟梁なら、10年寝かせると言われています。そして、欅(けやき)の魅力は、とにかく杢目(もくめ)の美しさ。玉杢(玉目)と呼ばれる、渦状の丸くて美しい杢目が魅力。この1〜1.5cmの玉杢1つに付き、1万円の価値があるとも言われているんですよ。なかでも、全体に赤みがかっているものが重宝されてきました。
ただ、硬過ぎて、実は職人泣かせの木なんです。
ノミ、カンナといった道具がすべて傷むのです。
そのぐらい硬い!でも、その分、丈夫なんですね。
檜(ひのき)との違いでいうと、ヒノキは育つ環境が良ければ成長しやすく(太くなりやすく)上に伸びていくんです。そうなる事で、通し柱に使う事が出来る長さに、成長するんですね。しかし、欅(けやき)は、5~6メートルくらいのところで、枝がわかれていきやすく、通し柱に使えるくらいの長さに、真直ぐ育ちにくいんですね。しかも、固くて扱いにくく、木目のように曲がっていく、見る目がないと、使えない材料なんですね。そんな事を、踏まえながら、何年も寝かせてみなきゃ、選べない、使えない。それでも美しい欅(けやき)が重宝されてきたのは、それだけ、使える欅(けやき)が少なくなり時間がゆっくり、流れていたからかもしれません。
ゆっくりとした素材選びと時間をかけて建てる家
大切にゆっくり時間をかけて素材を選び、ゆっくり時間をかけて建てていく。それでも、丈夫で長持ちする家を造り、末代まで残してやりたい、という願いが、今の古民家の味わいに繋がっているのでしょう。自分が毎日暮らす家だからこそ、素材や内容にこだわり、大切にていねいに選んでいく。それが、日本家屋だと思います。
ていねいに暮らす。大切なものを子どもに伝える。
自然が生み出す美しいものが好き。
そういう生き方に共感できる人にならきっと、日本家屋の良さも伝わると思います。